Let's GW --金ぴら船々、金ツマふらふら-- Vol.1
金ツマは前回の旅の後、派遣先を祖母の自宅の近くに決めた。
歳を取って以前のようには動けなくなった祖母の、少しでも役に立てたらという思いだった。
金ツマがおへんろをしている間に2回祖母は入院している。2回とも転倒が原因の骨折や怪我だった。
おへんろに行って、たとえ祖母の安全や健康、長寿を祈願したとして、実際にはただトロトロ歩いているだけで何もしてあげられてないじゃないかと思ったのだ。
11月の間は週に2度祖母の家に通った。
いとこがお嫁に行って以来、祖母は寂しかったのかもしれない。
「金ツマちゃんはおしんこが好きだから買ってきて」「金ツマちゃんと食べるからおいしいパンを買ってきて」と、金ツマが来る日をいつも朝から待っていてくれたのだそうだ。
耳の遠い祖母に聞こえないくらいの声で、ある日伯母が言った。
「おばあちゃん、12月からグループホームに入る事になったのよ」
前からそんな話しを聞いていないわけじゃなかった。そういう施設を見に連れて行った事もあるといとこが言っていた。その時祖母は断固として拒否したという。
今回は本人には家が古くなったからその間の仮住まいだと言って連れて行くのだと言う。
騙して、連れていくのか?
金ツマは強い反感を覚えたけれど、ボケてきてしまった祖母、火の不始末や怪我、幻聴。まして、一日中外に出られず、一人で聞こえないTVを見ているのは果たして幸せと言えるだろうか。
長男である伯父夫婦がとことん話し合って出した結論に、いままで何もして来なかった金ツマが何か言えるわけがない。
12月に入って、祖母のホームに入る日が近付いた。
金ツマの母は今回の事は賛成していなかったので見送りには行かないと言った。母は泣いていた。
伯父は身体が悪いので、祖母の見送りには伯母に付き添って金ツマが同行した。
祖母の部屋を見て階段を降りて来ると、そこにお年寄りが座っていた。奥にも何人かいたのを、祖母はその時見たようだった。伯母と介護士さんがあれこれと手続きをしている間に、金ツマと祖母は応接間でコーヒーを啜っていた。
「あそこのおじいさんは、なんかおかしいね」と祖母が言い出した。
「そんな失礼な事言っちゃだめよ、おばあちゃん」と金ツマがたしなめると、
「前にも、Yちゃん(いとこ)とおねえさんと年寄りばっかりの所に行ったよ」と言う。
そこから祖母が急に話し出した。不安で、緊張していた。手を握ると冷たかった。いつもあったかかった祖母の手が、冷たかった。
「おばあちゃんは、もうのんびりしたいんだよ。歳取ったって、区別しないで。あっちだこっちだ、嫌だよ」
「あっちもこっちも行ってないよ、おばあちゃん。怪我して、何度も入院したからそう思うのね。ここは病院じゃないのよおばあちゃん」
コーヒーを啜って、手をさすっていると、祖母がぽつりと言った。
「おとうさんも承知なんだ。さっき、見送りに出て来たもんね」
いくら家を直さなくちゃいけないからと言っても、祖母は分かっている。金ツマは祖母の目をしっかり見て、首を振る事しかできなかった。
「お母さんには言わないで。おばあちゃんがここにいること、嫌がるの分かってるよ。娘だから、分かるよ」
介護士さんと伯母が戻ってきて祖母の薬の説明を終え、領収証を受け取ったのを待っておばあちゃんは言った。
「じゃあ遅くなるから、もう帰ろう」
「おばあちゃん、今夜は私達の所に一緒にお泊りしていってくださいな」と介護士さんは言う。
「今日は帰りますよ。家の方にも遊びに来てくださいね」と、祖母。
伯母の悲しみを押さえた苦しい表情。
「おばあちゃん、お家を直す間って昨日あんなに話したでしょう。それまではこちらにご厄介になるから、ご迷惑を掛けないようにするって、おばあちゃん、約束してくれたでしょう」
祖母は金ツマの手を握ったまま、懇願する伯母に言った。
「分かっているんだよ。全部分かっているんだけど、やっぱり嫌なんだよ」
間に入ったのは介護士さんだった。
「おばあちゃん、よろしかったら今夜はどうぞこちらにお泊りください。明日お帰りになるのだっていいでしょう?お帰りになるのはいつだって大丈夫なんですよ」
「おばあちゃん、私もまた来るから。会社が近いから、また来るから」
金ツマがそう言うと、あの祖母の優しい笑顔で手を握ってくれた。
「金ツマちゃん、また来てね。おばあちゃん一泊してくから」
ホームの方にご挨拶をして、玄関のドアを閉める時の、見送る祖母の姿。
祖母を残して、グループホームを出た時の、あの気持ちは一生忘れない。
そこから駅まで伯母さんは堰を切ったように大号泣だった。
金ツマはPAPAS BARに入るまで、Papaの顔を見るまで、泣けなかった。
Papaは、金ツマがひとしきり落ち着くまで何も言わなかった。
金ツマがこの場に居合わせた事が、偶然でなくて必然なら、運命てなんだろうと思う。
小さい時からかわいがってもらったおばあちゃん。小さな小さな事だっていい。何か一つでも、返す事ができればと思って、おばあちゃん家に通い始めた。小さな小さな、何か一つでもが、金ツマには、これだったのだろうか。
罪悪感は消え去らず、新しい仕事が忙しい事もあって直行直帰の日々が続いた。金曜も出なかった。
歳を取って以前のようには動けなくなった祖母の、少しでも役に立てたらという思いだった。
金ツマがおへんろをしている間に2回祖母は入院している。2回とも転倒が原因の骨折や怪我だった。
おへんろに行って、たとえ祖母の安全や健康、長寿を祈願したとして、実際にはただトロトロ歩いているだけで何もしてあげられてないじゃないかと思ったのだ。
11月の間は週に2度祖母の家に通った。
いとこがお嫁に行って以来、祖母は寂しかったのかもしれない。
「金ツマちゃんはおしんこが好きだから買ってきて」「金ツマちゃんと食べるからおいしいパンを買ってきて」と、金ツマが来る日をいつも朝から待っていてくれたのだそうだ。
耳の遠い祖母に聞こえないくらいの声で、ある日伯母が言った。
「おばあちゃん、12月からグループホームに入る事になったのよ」
前からそんな話しを聞いていないわけじゃなかった。そういう施設を見に連れて行った事もあるといとこが言っていた。その時祖母は断固として拒否したという。
今回は本人には家が古くなったからその間の仮住まいだと言って連れて行くのだと言う。
騙して、連れていくのか?
金ツマは強い反感を覚えたけれど、ボケてきてしまった祖母、火の不始末や怪我、幻聴。まして、一日中外に出られず、一人で聞こえないTVを見ているのは果たして幸せと言えるだろうか。
長男である伯父夫婦がとことん話し合って出した結論に、いままで何もして来なかった金ツマが何か言えるわけがない。
12月に入って、祖母のホームに入る日が近付いた。
金ツマの母は今回の事は賛成していなかったので見送りには行かないと言った。母は泣いていた。
伯父は身体が悪いので、祖母の見送りには伯母に付き添って金ツマが同行した。
祖母の部屋を見て階段を降りて来ると、そこにお年寄りが座っていた。奥にも何人かいたのを、祖母はその時見たようだった。伯母と介護士さんがあれこれと手続きをしている間に、金ツマと祖母は応接間でコーヒーを啜っていた。
「あそこのおじいさんは、なんかおかしいね」と祖母が言い出した。
「そんな失礼な事言っちゃだめよ、おばあちゃん」と金ツマがたしなめると、
「前にも、Yちゃん(いとこ)とおねえさんと年寄りばっかりの所に行ったよ」と言う。
そこから祖母が急に話し出した。不安で、緊張していた。手を握ると冷たかった。いつもあったかかった祖母の手が、冷たかった。
「おばあちゃんは、もうのんびりしたいんだよ。歳取ったって、区別しないで。あっちだこっちだ、嫌だよ」
「あっちもこっちも行ってないよ、おばあちゃん。怪我して、何度も入院したからそう思うのね。ここは病院じゃないのよおばあちゃん」
コーヒーを啜って、手をさすっていると、祖母がぽつりと言った。
「おとうさんも承知なんだ。さっき、見送りに出て来たもんね」
いくら家を直さなくちゃいけないからと言っても、祖母は分かっている。金ツマは祖母の目をしっかり見て、首を振る事しかできなかった。
「お母さんには言わないで。おばあちゃんがここにいること、嫌がるの分かってるよ。娘だから、分かるよ」
介護士さんと伯母が戻ってきて祖母の薬の説明を終え、領収証を受け取ったのを待っておばあちゃんは言った。
「じゃあ遅くなるから、もう帰ろう」
「おばあちゃん、今夜は私達の所に一緒にお泊りしていってくださいな」と介護士さんは言う。
「今日は帰りますよ。家の方にも遊びに来てくださいね」と、祖母。
伯母の悲しみを押さえた苦しい表情。
「おばあちゃん、お家を直す間って昨日あんなに話したでしょう。それまではこちらにご厄介になるから、ご迷惑を掛けないようにするって、おばあちゃん、約束してくれたでしょう」
祖母は金ツマの手を握ったまま、懇願する伯母に言った。
「分かっているんだよ。全部分かっているんだけど、やっぱり嫌なんだよ」
間に入ったのは介護士さんだった。
「おばあちゃん、よろしかったら今夜はどうぞこちらにお泊りください。明日お帰りになるのだっていいでしょう?お帰りになるのはいつだって大丈夫なんですよ」
「おばあちゃん、私もまた来るから。会社が近いから、また来るから」
金ツマがそう言うと、あの祖母の優しい笑顔で手を握ってくれた。
「金ツマちゃん、また来てね。おばあちゃん一泊してくから」
ホームの方にご挨拶をして、玄関のドアを閉める時の、見送る祖母の姿。
祖母を残して、グループホームを出た時の、あの気持ちは一生忘れない。
そこから駅まで伯母さんは堰を切ったように大号泣だった。
金ツマはPAPAS BARに入るまで、Papaの顔を見るまで、泣けなかった。
Papaは、金ツマがひとしきり落ち着くまで何も言わなかった。
金ツマがこの場に居合わせた事が、偶然でなくて必然なら、運命てなんだろうと思う。
小さい時からかわいがってもらったおばあちゃん。小さな小さな事だっていい。何か一つでも、返す事ができればと思って、おばあちゃん家に通い始めた。小さな小さな、何か一つでもが、金ツマには、これだったのだろうか。
罪悪感は消え去らず、新しい仕事が忙しい事もあって直行直帰の日々が続いた。金曜も出なかった。
コメント
それをいうならプロローグ。
私はそこまで変態じゃないですよ(^ ^;)
何かを自分に課すとか、そんな高尚でもないし。
考え過ぎですよPapa!
何かを自分に課すとか、そんな高尚でもないし。
考え過ぎですよPapa!
グループホームは悲しいとこなの?
金ツマさん、こんにちわ。
おばあさんとおばあさんの家族にとって最善の選択だと思います。
金ツマさんが、思いっきり悲しむことなのかなあ。この世は自分の思い通りになるわけじゃないし。グループホームという施設で生活することで心安らかになるんじゃないかな。
私の母は元気な87歳ですが、巣鴨のお地蔵さまのとこに縁日に一人で行きます。健康食品のファンです。病気にならないことが、子供孝行だと言っております。でもあと10年後は、私達もそおいう選択をするかもしれないの。それが非道なのか、不幸なことなのか、幸せに生き抜くことなのか。最善をつくします。そんじゃま。
おばあさんとおばあさんの家族にとって最善の選択だと思います。
金ツマさんが、思いっきり悲しむことなのかなあ。この世は自分の思い通りになるわけじゃないし。グループホームという施設で生活することで心安らかになるんじゃないかな。
私の母は元気な87歳ですが、巣鴨のお地蔵さまのとこに縁日に一人で行きます。健康食品のファンです。病気にならないことが、子供孝行だと言っております。でもあと10年後は、私達もそおいう選択をするかもしれないの。それが非道なのか、不幸なことなのか、幸せに生き抜くことなのか。最善をつくします。そんじゃま。
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今回、四国へ行くためのプレリュードですか?
何かを自分に課すために、強行な日程を組んだのですか?
金ツマさんに、何かあったら、おばあちゃん悲しみますよ。